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    • 2016.12.22 Thursday
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    見えない帝国 村井さだゆき

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      これほど街の様相が一変するとは思わなかった──というのはポケモンGOのことである。

       

      日本での配信開始が、7月22日。
      この日、ちょうど授業があったので、映画美学校に行くのに、夕刻、神泉駅から円山町の狭い裏通りを抜けていったのだが──早速いた。うろ……うろ……とスマホを見ながら歩く人が数名。中には若い女性もちらほら。
      辺りはホテル街。普段、この時刻に見かけるのは、人目もはばかる不倫カップルくらいというこの界隈を、若い女性が一人でじっとスマホを見ながらうろつくさまは新鮮だった。

       

      そこからユーロスペース前の道、Bunkamuraから道玄坂に抜ける坂に出るとさらに驚きの光景が。俯いて歩きながらスマホを見ている人の群れ──もちろん全員がポケGOをやっているとは限らないが、立ち止まったり、ゆっくり動きだしたり、みんなが画面をじーっと見ているさまは明らかに普通じゃない。それがいつものO-EASTのライブ待ちの一群と混然一体となってカオスな状態である。もしポケGOサービス開始のニュースを知らなければ、いったい何が起こってるんだ! と慌てたことだろう。これほど劇的に日本中の街の景色が変わったことは、これまでなかったのではないか。

       

      さすがに2週間以上過ぎてやや落ち着いてきた感はあるが、最初のインパクトは忘れられない。次の週はどのスタジオに行っても、時候の挨拶のようにポケモンGOの話題が飛び交っていた。

       

      さてこのポケモンGO、任天堂はキャラクターのライセンスを貸しているだけで、開発・配信は別の会社が行っていることはご存じだろう。「Ingress(イングレス)」というゲームを作ったNianticという会社だ。
      ちょうど『アニメいずめんと』で、声優でもありイラストレーターでもある天神英貴さんと、同じ牙狼チームでご一緒させていただいたのだが、その天神さんが、楽屋でも食事に行く移動車の中でもずーっとスマホをいじっている。何ですかそれと訊くと、それがIngressだった。

       

      そのとき天神さんに、Ingressについて詳しく教えてもらったのだが、そのシステムはなかなか興味深かった(おかげで今回の話題にもぎりぎりついていけているので、天神さんにはありがとう。天神さん、ポケモンGOはやってますかー)。
      まず、登録するときに青チームか緑チームかを決めて、この両軍の陣取り合戦に参加する。この両チームがポータル(拠点)を奪い合っていて、3つのポータルで囲んだ領域が自軍の領地となる。そういえば、日本がどっちかの陣営に占領された! ってニュースがネットを駆け巡ったことがあったなあ。

       

      ところで「街をフィールドにしたゲーム」というと、自作の歴史の中で思い出すのが、『Dの遺伝子』#07「デスノート」である。
      『Dの遺伝子』は97年フジテレビの深夜に放送していた、いわゆるフェイクドキュメンタリーのていをとったドラマである。
      この回の内容は、渋谷、あるいは新宿のような街をフィールドに、「ダクト」と呼ばれるゲームが密かに流行っているという設定。「ダクト」は携帯電話でネットにアクセスし、街のいくつかのスポットを陣取り合戦のように奪い合っていく。負けるとスタンガンを使った懲罰が待っていて、時には死の危険もある、というもの。

      イメージしたのは「潜水艦ゲーム」のようなもので、魚雷を撃って索敵しながら、敵のスポットを見つけたらそこを奪いに乗り込んで勝負する。同時に自分のスポットを敵に見つかったら、一定時間内に戻って防衛戦を行う、という感じ。

       

      Ingressのことを聞いた時、ああこれだと思った。冗談であの時システムの特許か何かをとっておけば、などと言ったりするのだが、実を言うと陣取り合戦の仕組みが上手く考えられず、作中では明確にしなかったのだった。1対1なら簡単なのだが、複数の人間が同時に参加する仕組みをちょっと思いつかなかったのだ。Ingressは最初にどちらかに登録させることでこの問題をスマートに解決している。このゲームを作った人は頭がいい。

       

      「デスゲーム」を書いた時、僕が意識していたのは、現実の街の裏側にもう一つ、別の何かが蠢いている世界があるかもしれない、という感覚だ。多くのサイバーパンク作品が描くサイバーな異世界は、ネットの沃野にジャックイン(没入)した瞬間に現れる、現実とは別の世界だ。それはそれで素敵なモチーフだが、「デスゲーム」ではそうではなく、現実の街と重ね合わさるように、何かが密かに行われている不気味さを描こうとしたのである。IngressやポケモンGOは、それをARという技術を使うことで現実のものとした感があってとても興味深い。

       

      この「現実と重なり合った仮想空間」の感覚。大げさな話ではなく、人類は今初めてその不思議な感覚を味わっているのだ。
      冒頭で街の様相が一変したと書いたが、実はそうした見た目以上に、世界は一変したのかも知れない。我々は、現実と隣り合わせに、もう一つ別の広大な帝国の領土を手に入れたのだ。次に起こることは、きっとそこで「物語」が展開するだろうということ──我々が考えるべきは、そこでどんな物語を語ることができ、その時、それを享受する人々の心性にどんな変化が訪れるだろう、ということではないか。
      (まあ僕は、天神さんに「村井さんもどうですか?」と言われ「ガラケーなので」と丁重に辞退した通り、ポケモンGOもやってないんですけどね)


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