漫喫。 高橋泉

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    漫画喫茶。通称、漫喫。漫画を多数揃えた喫茶店で、名古屋が発祥の地らしい。

    昔はもちろん、漫画を読みに行っていたけど、ここ数年、漫喫でほとんど漫画を読んだ記憶がない。漫画だけじゃなくて、新聞にもパソコンにも雑誌にも触れない。僕が満喫を利用するのは仕事が主。狭くて薄い壁に囲まれていると、仕事が異常にはかどるからだ。

    喫茶店だと、人の話し声がうるさいのもある。それを遮るために聞く音楽も、またうるさい。漫喫はほぼ、僕の中では図書館と同義。タバコが吸える図書館。館内で話し声は聞こえない。原作を周りの視線を気にせずに広げられるのもいい。

    出来ればフラットシートが良い。リクライニングタイプは、位置取りに時間がかかる。あの狭い空間で、座席とテーブル(PC台)の距離を合わせるのは一苦労。

    だけど、都心のフラットシートは人気。喫煙ブースの縮小も相まって、「喫煙、フラットシートで」という選択は二重苦になっている。新宿の『マ○ボー』は結構な激戦。だからなのか、昼間のゆるい時間に入ると、「今、フラットいけますよ?」と言われることがある。「マジすか?」と思わず心踊る瞬間。

    まずは部屋のナンバーを、何度も何度も自分の中で復唱する。僕はネガティブな思考なので、間違って他人の部屋に入ってしまって、殺されるレベルまで想像してしまう。

    満喫のフリードリンクには、大きくグラス(プラカップ)と紙コップの二種類がある。グラスの方がサービスが良い感じがするが、返却せずに重ねてゴミ箱に捨てられる紙コップの方がやや有利。もう少しサイズが大きければベターだけど。

    個室は風営法で、ドアの下から中が見えなければいけないらしいが、入ったらまず、そこはリュックで塞ぐ。まさか腰をかがめて覗いてくるやつはいないとしても、密室感がないと筆が進まない。

    満喫の一番の騒音はいびきだと思われがちだが、一番嫌なのはスマホのアラーム。いびきかいてるやつは気楽なんだろうなと思えるけど、アラームが鳴り出すと、そいつはこれから起きて、何か用事を済ませなければならないという、月曜の朝の空気みたいなのが、僕の中に入ってくる。僕は誰かに時間を決められて出かけるのが本当に嫌いで、それは誰でも同じだよ、というレベルではなくて。

    PC台に乗ったキーボードをグッと奥に退かし、自分のパソコンを置く。その瞬間から仕事が始められるように、受付を済ませながら、最初の書き始めだけでも、頭の中で作っておく。パソコンを開いた瞬間に書き始められないと、そのままズルズルと時間だけが過ぎていく。金を払ってコクピットに乗り込んだ意味がなくなる。

    そこからただただ書き続ける。まだまだ書けるし頭の中で台詞が浮かんでいても、キーボードを叩くのを体が拒否したとき、だいたい5時間経っている。そこからクールダウンとしてスマホでキャンディークラッシュしながら、6時間パックを終える。

    おそらく寄る年波には勝てないのか、5時間が限界になってきた。5時間を間を空けて二回戦はいけるけど、気づいたら12時間経っていて、店員に一度清算してくれ、といわれることはもうなくなった。

     

    寄る年波といえば、酒を飲むと眠ってしまうことが多くなった。その対処法としても、ここ数年は終電があっても漫喫を利用するようになった。

    中央線ユーザーはやってしまったことがあると思うけど、乗り過ごした先が、高尾、八王子、豊田……ならまだいいんです。一番ヤバいのは青梅。何故なら、駅前に漫喫がないから。駅前派出所のバス停のベンチは安全だと思うけど、夏限定。それに、

    中央線終点あたりの漫喫は、客を取ってる女性の電話の声が聞こえたりもするので、ただでさえ閑散として不安を抱えた乗り過ごし組に、もうひとムチ感あり。

    昨年、脚本コース4期の生徒と渋谷で忘年会をやった際、調子に乗ってガンガン金を払っていたら、残り3千円くらいしか財布に入ってなくて、まあ、ラーメン食って6時間パック1500円払って朝帰ればいいやとタカをくくっていたら、年の瀬でどこの漫喫も満室御礼だったことがあった。何軒回ってどのくらいの時間を費やしたのか。それでも最後に入った漫喫で空き室があった。

    「リクライニングでも、禁煙でもなんでもいいです」。とにかく眠りたかった僕に、「ペアシートなんで、値段倍だけどいいです?」と店員。Suicaに残ってる金などを全部計算して、3時間、3時間なら行ける!

    たかが漫喫、されど漫喫。そこに入る前と入った後に、世界は二分される。


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